日 時:2011年7月1日(金) 12:00-13:30
場 所:法曹会館 2階 高砂
-第45回キワニス社会公益賞贈呈式―
受賞団体:特定非営利活動法人社会的養護の当事者参加推進団体 日向ぼっこ
理事長 渡井さゆり氏、理事 渡井隆行氏
授賞式
○大庭社会公益委員長より選考経過報告並びに受賞者紹介
本年度の受賞団体は日向ぼっこというNPO法人です。その理事長は渡井さゆり様です。本年度推薦された団体は13ありましたが、委員会で慎重な審査の結果選ばれた団体です。養護というのは、子どもを護り育てていくということですが、現実には親が子に先立って亡くなってしまう、親がいろいろな理由で行方不明になってしまう、子育てを放棄してしまう、子どもを虐待する等さまざまな理由によって、実際上親のない子がいます。社会ではそういう子どもを養護する制度を用意しており、現在4万人ほどの子どもがその制度で養護されています。社会養護施設のサービスを誰かがチェックしているでしょうか。家族がいなければ、誰が親身になってそういうサービスをチェックするでしょうか。そういうところで成長した若者を社会がどのように迎え入れているだろうか。これは当事者だけがわかっていることです。実は家族のないこのような若者達はいわれのない差別に悩んだり、さまざまな問題に直面しています。日向ぼっこはそのような家族のいない若者達に集まってくつろげる場を用意する、問題に苦しんでいる若者の相談にのる、社会的養護のサービスの実態を把握し、その改善を提言するという活動を行なっています。当事者でなければわからない問題を他に先駆けて取り組んできた団体です。この活動は健全な青少年を育てるために意義の大きなものです。子どもに奉仕しようという我々キワニスクラブにとりまして、称賛すべきものだと判断されます。以上、本年度の社会公益賞の受賞団体、日向ぼっこをご紹介いたしました。
日向ぼっこの活動は以前NHKの「追跡A to Z」という番組で報じられたことがあります。日向ぼっこで相談をしながら、力強く歩んで行こうとする青年の姿が描かれていました。立派な活動をされているな、世の中にどうしても生じてしまった親のない社会的養護を受けた人達をこれから先どのように育てていくのかを考えたとき、それが健全な社会の強さを持つということだと思うものですから、こういう活動がますます発展することを心より祈るものです。キワニスとして素晴らしい団体を選ぶことができたと考えています。
○会長より表彰状並びに副賞贈呈
○受賞のことば 渡井さゆり氏
このたびは名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。先ほどご紹介いただいたように、日向ぼっこでは児童養護施設、里親家庭など社会的養護の下で生活していた人達の居場所相談事業と当事者の声を市民、行政、援助者の方々に伝える普及啓発活動をしています。昨晩も厚生労働省で社会的養護の課題等に関する検討委員会が行なわれ、当事者として意見を申し述べてきたところです。先ほどから当事者という言葉が出ていますが、私自身も子どものとき、児童養護施設、母子生活支援施設であわせて10年間お世話になりました。私自身が悪いことをしたり、過ちがあったわけではなく、私には選べなかった親が私のことを育てることができまず、親からも「あんたなんか生みたくなかったんや」と言われて育ちました。物心ついたときには施設でも、施設の職員達は仕事で私のことを育ててくれていて、私も人に迷惑をかけないようにとの義務感で生きてきました。高校まで社会的養護の下で育ててもらえたことは本当に感謝しています。私自身が生まれてきて良かった、これから幸せになろうという思いを持って社会に羽ばたけたかというとそうではなく、ここまで育ててもらったけれど、この先どこに向かって、どういうふうに歩いていけば良いのかな、どういうふうに生きていけば良いのかな、悲しいことがあったときに一緒に悲しんでくれる人もいなければ、嬉しいことがあったときに一緒に喜んでくれる人もいない、そういう人生の悲喜こもごもを分かち合う人だったり、わからないことを教えてくれる人もいない。そういう人生を何のために生きていかなければならないのか。18歳のフリーターだった私にとってとてもしんどいことでした。
私と同じような境遇の人達同士で支えあうことができれば良いなと思い、貯めていたお金で大学に行き、大学で幸運にも出会えた同じような境遇の人達とともに日向ぼっこの勉強会を始め、同じような境遇の人達が集える場所、日向ぼっこサロンを立ち上げました。そして、今は集ってくださる方々に、その人達が悪いわけではないけれど得られなかった家庭的な環境を体験していただければと日々思いながら、日向ぼっこの運営をしています。このような栄えある賞をいただくことになるとは夢にも思っていなかったので、感無量で、とても嬉しく胸がいっぱいです。
まだまだ社会的養護のことは知られていないと思います。次世代を育成していくに当たって、少子高齢社会の中で一人ひとりの子ども達が生まれてきて良かった、幸せになろう、そのことがひいては国力になると信じています。たまたま親に恵まれなかった子どもは、そのハンデを一生背負っていくという今の日本の社会の構造が改善され、どんな子どももフェアなスタートが切れるように、そのために行政に働きかけをできるだけしていますが、市民の方々の理解、支持が不可欠です。これまでの日本を支えてこられ、また今後も支えてくださる皆様方にご理解とご支持をいただき、社会的養護がますます充実することを願っています。そのために今後も活動に邁進していく所存です。本日はありがとうございました。