キワニスクラブは、奉仕活動を行う民間の団体です。

第48回(平成26年度)社会公益賞:贈呈式

日 時:2014年7月4日(金)12:30-13:30
場 所:法曹会館 2階 高砂

-第48回キワニス社会公益賞贈呈式-
受賞団体:東京里山開拓団(代表 堀崎茂様)、
HINO飛ぶ教室(代表 滝口仁様)、
NPO法人楽の会リーラ(理事長 安斉陽一様)

贈呈式

贈呈式

○中門社会公益委員長より受賞者紹介並びに選考経過報告

今回の選考に当たっては東京ボランティア市民活動センターから6団体、東京都福祉保健局から3団体、会員から6団体の合計15団体の推薦がありました。社会公益委員会を6回開催、第1回委員会では推薦依頼と選考方法を決めましたので、実質的な選考、審査は5回の委員会で行いました。審査に当たっての方針は、キワニスの目的である子どものための奉仕活動に最も相応しい活動をしているような団体を選ぶ、その中でも特に、子どもに対する虐待、いじめ等の防止をしているような団体を重視したらとうかという意見がありました。組織力、財政力の大きな団体は除き、世間に知られずに地道に努力をされている団体が望ましい。活動実績については最低でも3年以上あり、しっかり活動している団体を選考する。子ども以外に対する支援活動、社会福祉一般についても、社会公益のために継続して地道に活動している団体があれば、含めることにしました。

以上のような方針の下に審査をした結果、虐待、いじめ防止の活動をしている団体もありましたが、組織力、財政力が大きかったために外し、虐待やいじめを受けた子どもを支援する団体、引きこもりの若者への支援をしている3つの団体が残り、それぞれの団体の活動状況について委員が分担して、訪問調査を行い、確認をいたしました。委員会の決定をして、5月13日の理事会において承認をいただきました。

今回の受賞の3団体の活動状況(資料配布)についてご説明いたします。東京里山開拓団は八王子にある荒れた里山を開拓し、そこに大田区にある児童養護施設の子ども達を毎月連れて行き、子ども達に自然とふれあいをさせ、遊具づくり、落ち葉集め、畑作業等の体験をさせる活動をしています。里山の環境保全と恵まれない子ども達への支援活動を両立させる活動をしています。この活動は全てボランティアで行っています。HINO飛ぶ教室は不登校、いじめの被害を受けている子ども、発達障害等の問題を抱えた子どものためのフリースクールを開設し、学習指導だけではなく、フットサル、テニス、太極拳等のスポーツも行い、それぞれの子どもに合った支援をし、彼らの居場所を提供しています。ひの・子ども支援塾として生活保護の家庭、低所得のひとり親家庭の子ども達のために、無料の学習支援も行っています。HINO飛ぶ教室もほとんどがボランティアによって支えられています。NPO法人楽の会リーラは全国で引きこもりの人達は30歳以下では70万人、40歳以上を加えると約100万人いると言われています。引きこもりで悩んでいる青年とその家族のための支援活動を行っています。当事者からの電話相談、居場所の開設、家庭への出前相談、親に対するカウンセリング、学習会を行っています。引きこもりの当事者だけ、あるいはその親だけを相手にする団体はありますが、楽の会リーラは親と子ども双方をサポートする活動を行っています。担当者はボランティアでやっておられます。
受賞団体の代表の方々に心からお祝いを申しあげるとともに、これまで推薦と審査に当たってくださった会員各位に心から御礼申しあげます。

○会長より表彰状と副賞贈呈

○受賞者のことば

①東京里山開拓団 代表 堀崎茂様

このたびは伝統あるキワニス社会公益賞をいただき、誠にありがとうございます。正直我々のようなものがいただくに値するのかなと思っていましたが、先ほどの審査基準として地道に活動しているところというお話があり、少しだけ合点が行きました。私共の活動は山に道をつくるところから始めますので、正に地道な活動です。東京には何十年も人が入らなくなった里山がたくさんあります。そこに道をつくり、広場をつくり、児童養護施設の子ども達と一緒に開拓を行い、自然の恵みを活用するボランティア活動を行っています。私が一人荒れた里山に入ったのは2006年でした。その頃に里山の価値に気づき、熱心に通っていると、地主さんからそんなに好きならと譲っていただきました。2009年ボランティア団体として発足いたしました。2012年から児童養護施設の子ども達と活動を始めました。それまでなかなか順風満帆には行かず、山の中で道に迷ったり、大怪我をしそうになったり、地元の方から不審者扱いされたりしました。いろいろな施設に声をかけましたが、信頼も実績もないところからやっていたので、会ってももらえませんでした。それでも続けられたのは私自身里山に魅力を感じていたからです。大人も子どもも里山に行ったら、自分達の知識、力で取り組みます。そこにある木、葉っぱ、石が資源に見えてきます。そういう資源をどう活用するか子ども達と相談しながらやっています。子ども達は焚き火を焚くことも出来るようになりました。畑を開墾して芋を育てています。腐葉土も落ち葉を集めてつくります。雨水をタンクに集めて、水をまいています。巨大なブランコ、展望台も手づくりしました。現代の都市で重視されているもの、所属、地位、年齢、名誉が一切役に立たない場であるところが里山の魅力だと思います。そういう空間は居心地が良い。

児童養護施設の子ども達との里山開拓は毎月1回、15回行い、延べ100人以上の子どもが参加してくれました。子ども達の多くはリピーターで、施設の先生方からはこんな笑顔を見たことがないと言ってくださいます。そんな力が里山にあるのかなと思っています。荒れた里山に子ども達の笑顔、笑い声がこだまし、いろいろな事情で親と離れて暮らす児童養護施設の子ども達は悩みを抱えていると思いますが、心から喜んでくれて、里山に自分の居場所を見つけ、楽しみを見出してくれて、私共はやりがいを感じています。東京は世界最大の人口を抱え、全世界では都市化がどんどん進んでいます。社会のひずみは児童養護施設の子ども達のような弱い立場の人の前に多く現れているような気がします。そんな世の中をつくってきた大人として何ができるかと考えてたどりついた一つの小さな道ですが、荒れた里山を開拓して、環境保全と児童福祉を両立させながら進める道でもあると思いながら取り組んでいます。子どもを楽しませるだけではなく、大人自身も楽しんでいこう、趣味とボランティアを兼ねて行うというように一石二鳥というコンセプトを重視しています。最近は企業とボランティアの一石二鳥に取り組んでいます。子ども達と開拓した里山を企業のメンタル研修として提供することを始めています。ここでは児童養護施設の子ども達は恵まれない、可哀相な存在ではなく、逞しい子ども達です。

まだまだチャレンジしながらの団体ですが、今回の受賞を励みとして地道に一石二鳥の取り組みを続けていけたらと思っています。引き続き皆様とのご縁をいただけましたら幸いです。本日はありがとうございました。

②HINO飛ぶ教室 代表 滝口仁様

本日はありがとうございました。1980年、30歳のときに今の教室の前身の八王子にあったTAKAO飛ぶ教室の代表になりました。それ以来34年アッという間に過ぎてしまいました。東京の八王子で地域の補習塾から始まり、いろいろな子ども達が来るようになりました。家、学校で親や先生が子ども達に皆と仲良くしなさいと言いますが、塾を始めて、皆ってどこまでだろうと思いました。学校に行きたくても行けない不登校の子どもは必ずクラスに何人かいます。障害があるという理由で地域の普通学校に進めなかった障害のある子ども達がいます。そういう子ども達も含めて皆と言っているのだろうかと、私自身の反省として思いました。インクルージョン、誰でもが来られるような地区という考え方で活動を始めました。インクルージョンとは、障害のあるなしで子どもをみない、障害があってもその種別で子どもを分けないという考え方で、どんな子どもでも受け入れています。噂を聞きつけて、少し遅れがある子、知的障害のある子、自閉症の子ども、様々な子どもが来るようになりました。障害のある子ども達は小さい頃から医療、教育、福祉と関わってきていますが、この三分野の横のつながりがありません。医療、教育、福祉のネットワークを立ち上げ、その三分野の子ども、若者に関わる人達と一緒に勉強会を続けています。

2011年に政府が初めて日本の子どもの貧困率を発表したのを機に子ども支援塾を立ち上げました。子どもの貧困率はおおよそ16%、6人に1人が貧困ということですから、決して少ない数字ではありません。OECD諸国の中でも高い数字です。子どもの貧困は戦争時のような絶対的貧困と違い、相対的貧困と言い、平均年収の半分以下の収入で生活している家庭のことを指します。パッと見たところではわかりませんが、関わってみると、いつも同じ服を着ているな、いつもご飯を食べているのかなと思うような子どもがいることも事実です。人生が100m競争だとすると、貧困家庭の子ども達は120m後ろからスタートしなさい、しかも重い荷物を持って走りなさいと言われているのと同じです。大人と違って子どもはどんな家庭で育ったかで人生が決まってしまう社会はどうなんだろうという思いから活動を始めました。

活動している中で、行政の政策のずれと立ち遅れを感じています。発達障害の子どもに関しても支援法があり、日野市にも発達支援センターができました。法制度で18歳までとなっています。18歳になると、発達障害が治るわけではないので、18歳以降の支援も必要ですが、制度的にそれがありません。貧困の支援法も成立し、法制度は整いましたが、自治体では具体的な動きがない状態です。私が役員をしている社会福祉協議会もキワニスも民間団体ですが、民間団体の方が制度にこだわらず、動きが早いように思います。制度の傘に入る子ども、若者は良いが、困っているけれど、支える制度がない子ども、若者に対することが私の取り組んでいくべき仕事だと感じています。本日はありがとうございました。

③NPO法人楽の会リーラ 理事長 安斉陽一様

本日は名誉ある賞をいただき、ありがとうございました。2002年、引きこもりのお子様を持っている親を対象に日頃の悩み、講師の話を聞く楽の会を立ち上げました。2年後に楽の会有志OBで、少し外に出られる引きこもりの子どもを支援する団体をつくることになり、2005年9月にNPO法人社会参加支援センターリーラを立ち上げました。家にとじこもり、長い間外に出ていない子どもは一筋縄では出て来ないので、まず電話相談を全国から受けることにしました。そういう子ども達が来られる居場所をつくったりして、活動を拡げてきました。事務所は巣鴨の地蔵商店街の一角にあります。親の会と支援センターを一緒にして、内容的に向上させて、昨年4月からNPO法人楽の会リーラとして活動しております。親の会は家族会と命名して発足以来毎月例会を行っており、世話役は全員ボランティアです。一番困るのは会場の確保です。豊島区の施設を抽選で借りています。原則第3土曜日と決めていますが、抽選に外れると、講師との調整等大変です。1回も途切れることなく行っています。就労支援の一環として昨年12月からコミュニティカフェ「葵鳥(あおどり)」と称してコーヒーを提供し、話し合いもするという活動を始めました。出てこられない方で依頼があれば、こちらから出向いて話をするという出前居場所の活動もしております。
引きこもり問題は難しく、子どもの年齢が上がり、親も高齢化しており、社会的にはなかなか認められておりませんが、引き続き活動を続けて行きたいと思っております。本日はありがとうございました。

○会長よりお祝いのことば

東京里山開拓団の堀崎茂様、HINO飛ぶ教室の滝口仁様、NPO法人楽の会リーラの安斉陽一様、本日はおめでとうございました。今年は東京キワニスクラブの50周年という記念すべき年です。中門委員長を中心に社会公益委員会が熱心に審議をしていただきました。候補の団体を訪問して細かい精査をされたと伺っております。今年は社会的にハンデキャップのある方々を支援している団体に焦点を絞り、この賞を授けることになりました。これも新しい試みでよかったかと思っております。本日受賞された三団体は正に子どものための奉仕という私共キワニスの活動の基本と軌を一にするものです。三団体それぞれ代表者を中心に多岐にわたる活動、アイディアを生み出して実施されていることに感銘を受けました。私共の支援は巨額とは言えませんが、これからも皆様の活動がますます充実して、受益者が増えることを心から祈りまして私のお祝いのことばにさせていただきます。おめでとうございました。