キワニスクラブは、奉仕活動を行う民間の団体です。

第50回(平成28年度)社会公益賞:贈呈式

日時:2016年9月2日(金)12:30-13:30
場所:法曹会館 2階 高砂

-第50回キワニス社会公益賞贈呈式-
受賞団体:最優秀賞 NPO法人「子どものちから」
優秀賞 任意団体「さーくる縁」
優秀賞 人格のない社団「こころの青空基金」

贈呈式

贈呈式
贈呈式
贈呈式

 

○都甲社会公益委員長より選考経過報告並びに受賞者紹介

今回の選考に当たっては、東京ボランティア市民活動センターから4団体の情報提供、会員から5団体の推薦があり、委員会で厳正な審査を行い、活動状況の訪問調査を行った上で、3団体をノミネートし、6月3日開催の第9回理事会において承認いただきました。この3団体について、活動状況をご説明いたします。

NPO法人「こどものちから」は築地の国立がん研究センター中央病院12階の小児待合室にボランティアの方と手分けして詰め、見舞いに来られても感染症管理対策上病棟に入れない小学生以下の兄弟を受け入れ、遊びを通じて心に触れ、やがて親御さんとの心のつながりという形で広まっております。こうした活動を通じて、がんや難病の子どもを抱えた家族に対して、安心して治療に取り組めるよう様々な相談にのったり、また、お互いの交流の場を設けるなど、いろいろな面での支援に努めておられます。

「さーくる縁」は、心身の発達に遅れのある子どもと保護者の互助会として活動しておられ、交流会、勉強会にとどまらず、音楽コンサート、遊びの会など開催しておられます。特に、「ふれあう心つながる縁コンサート」に力を入れておられます。プロの演奏家からボランティアとして協力を得、クラシック音楽コンサートとは言え、参加型の演目をなるべく取り入れ、障害のある子ども達が喜びを跳ねることで表現したり、周りに気兼ねすることもなく声を出したり、笑顔いっぱいで、のびのびと音楽を楽しむ機会となっています。

「こころの青空基金」の代表坂本博之様には、本年3月に当クラブ例会において「子ども達に夢を!笑顔を!」と題して、ご講演いただきました。北は北海道から南は沖縄まで児童養護施設を訪問され、子ども達とふれあい、ともに過ごす時間を持って、子ども達の心を開かせる努力をしておられます。さらに、養護施設の退所者の生活指導、就業等自立支援にも努めておられるところです。
受賞団体の代表の方々には心からお祝いを申しあげます。
これまで推薦、審査にご協力いただきました皆様に厚く御礼申しあげます。

○吉國会長より表彰状贈呈並びにお祝いのことば

本日はおめでとうございます。今年の8月はオリンピックでテレビにかじりついていたと思います。私もずっとテレビを見ていましたが、オリンピックでメダルを取った人、取らなかった人それぞれに素晴らしい言葉がありました。私が一番感銘を受けたのはオリンピックではなく、その同じ時期に3,000本安打を達成したイチロー選手です。これは人類史上の偉業だと思います。イチロー選手が後の記者会見で言った言葉が非常に心に残りました。それは「3,000本よりもっと大事なことがある。僕が何かをすることで、僕以外の誰かが喜んでくれる、それが僕にとって一番大切なことだ。」 これはあらゆるボランティア活動、NPO活動に共通する素晴らしいことだと思います。今日のお三方は正にその活動をそういう精神でやっておられる方だと思いました。井上様は子ども達との遊びを通じて、川村様は音楽を通じて、坂本様はスポーツを通じて、その素晴らしい活動について皆様からお話を伺いたいと思います。

○NPO法人「こどものちから」理事長 井上るみ子氏

本日はありがとうございます。このような名誉ある賞をいただけることは、私どもの団体にとってはありがたいことです。国立がんセンターで治療している子ども達や兄弟、家族、そして全国の小児がんを患い、頑張っている子ども達、家族、兄弟にそのまま送り届けたいと思います。本当にありがとうございました。

私の子どもが小児がんになり、国立がんセンターでお世話になり、他界したのが18年前になります。そのとき小学5年生の一番下の娘が「私は蚊帳の外だった」という発言をしました。わずか9か月の闘病でしたが、私が母親として娘に対していろいろ説明したこと、彼女自身が頑張ってくれたことを彼女に理解させるのに2年かかりました。私はとんでもないことをしたと思いました。そのあと、国立がんセンターで子ども達と関わっている中で、幼稚園の年長になるお兄ちゃんと遊ぶ機会がありました。弟が入院中でした。そのお兄ちゃんと「アンパンマンごっこをして遊ぼうか」と言うと、とても嬉しそうにしましたが、「僕はばいきんまんの方が好きなんだ」と言いました。「ばいきんまんは叱られるけれど、自分が言いたいこと、やりたいことをやれるよね」と言いました。この子はどんな生活をしているのだろうかと思いながら、ばいきんまんごっこをしました。そして、遊ぶ時間が終わりだと言うと、彼は下を向いていましたが、清々しい顔で、「僕はアンパンマンに戻るね」と言って、父親のところに戻っていきました。その関わりから、兄弟は自分の役割をしっかり理解していると思いました。自分を押し殺しながらも、自分の家族に良い影響を与えられるように自分を納得させながら、頑張っていると思いました。そんな思いから、子どもと遊んでもらうことを決意しました。そして、個人的に6年間関わり、団体として4年になります。子ども達はますます元気に私達と関わってくれるようになりました。

先日、保育園の卒園式に15分しか参加できない妹さんがいました。その卒園式の朝、お兄ちゃんの体調が悪くなり、歌の上手な妹さんが一生懸命練習した歌を皆に聞いてもらうこともできずに病院に来てしまったからです。しかし、その妹さんは私達に上手に歌ってくれて、母親は皆の前で歌うことができてよかったと言っていました。私達は兄弟が頑張っていることを伝えたいと思います。そして、本人達には頑張っていること、あなたらしく生きていくことはOKだよと伝えていきたいと思います。安全な場所をつくることで、安心して自分らしく生きていけることを伝えたいと思います。それを見ると、親御さんも安心して病気の子どもに全力投球できるのではないかという思いでいます。いずれ小児がんが普通の風邪のように皆が治療できる時が来るように祈りながら、兄弟も頑張っている、サポートが必要なんですよという種を蒔いていきたいと思います。本日はありがとうございました。

○任意団体「さーくる縁」代表 川村紀子氏

このたびは大変栄誉ある、そして歴史ある賞を受賞させていただくことになり、感謝申しあげます。同時に大変恐縮する思いもあります。私達のような小さな団体で、ささやかな活動をしているものに温かな光を当てていただきました東京キワニスクラブの皆様に感謝しています。温かい気持ちをいただいたことを、これから頑張ってくださいというエールの気持ちで送り届けてくださったと考えており、身を引き締めて活動して参りたいと思っております。

私達「さーくる縁」は障害のある子ども、障害があって発達に遅れがあったり、できないことがあったり、病気があったりする子ども達とその家族の会になります。障害の種類は様々です。原因がわからないまま発達が遅れている子どももいます。障害のある子どもがいたお蔭でできたご縁を大切にしたいということで「さーくる縁」という名前をつけ、つながりあうことで、幸せであること、豊かに暮らすことを支え合えたら良いねということで活動しています。自分の子どもに障害があって生まれてくる前は、障害があるということは不幸なことだと思っていました。また、当事者だけではなく、そういう子どもがいる家庭はお気の毒だと思っていました。実際に、自分のところにダウン症の子どもが生まれてきて、一緒に生活し、その子を通じて色々な障害のある方、病気の方、その家族の方と出会った中で、それは間違った考え方であることに気付きました。障害があって生まれてくることは喜びではありませんが、そのことが不幸な訳ではないと実感しています。実際に、その子の存在そのものが喜びであり、優しい空気になると感じています。幸せであることは条件ではなく、そこにいるというだけで、美しく、大切なことだと実感しています。同時に、家族として、友人として一緒に過ごすことができるということは喜びであるとも感じています。奇跡なような、幸せな場であると、「さーくる縁」のメンバーの母親達の実感でもあります。子どもができないこと、病気のときなどに、子どもが持っている苦しみ、それがあるが故の困難を強く感じるときは、母親としてとても苦しい気持ちになることもあります。溺れそうになったとき、わが子だけではなく、家族も社会から排除され、孤独を感じることもあります。そんなときに、同じ境遇にある家族達がつながっていることによって、溺れそうになる気持ちを立て直すことができます。困難に立ち向かうとき、一人ではないと感じると、勇気がわき、困難を乗り越えることができます。自分の心が平穏になると、存在自体を喜び合い、一つひとつの行為に感謝や幸せを深く感じることができると思っています。「さーくる縁」はそういうつながりを育み、場づくりを大事にしてきました。共に楽しんだり、笑ったり、時に泣いたりしながら、つながりあう場をこれからもつくっていきたいと思います。

運営のメンバーは全員母親ですので、小さい子どもを育てることを最優先にしてやっていますので、やれることはささやかなことです。できるときに、できる人ができることをモットーに、小さな力を集めて活動しています。活動としては、勉強会、情報交換会、家族で楽しむバーベキュー、秋には人形劇をする予定です。大きな活動としてはコンサートを開いています。音楽には力があると感じています。子ども達が楽しんでいる姿を見ると楽しくなります。子ども達がそれぞれのやり方で楽しむ場を設けていきたいなと思っています。東京キワニスクラブの皆様からいただいた温かいエールを力に変えて、これからも夢を膨らませて進んでいきたいと思っております。本日はありがとうございました。

○人格のない社団「こころの青空基金代表 坂本博之氏

このたびは名誉ある賞をいただきまして、誠に感謝しております。今年の3月4日にキワニスで、全国の児童養護施設の子ども達とのふれあいの中で感じたこと、学んだことをお話させていただきました。熊本地震の後、熊本の養護施設、菊水学園に行きました。菊水学園は5月末まで避難所になっていました。子ども達と一緒に崩れ落ちている屋根や瓦礫を運びました。私はボクシングを通して、全国の養護施設の子ども達に熱を伝える活動を続けております。熱とは愛だと思います。愛とは待つことだと思います。その子に伝えても、返ってくることを望んではいけないと思います。与えっぱなしだと思います。それが愛だと思います。その子から次の世代の子にバトンタッチしていけば良いと思います。そして、私が70歳、80歳になったころに、昔、子どもに言った言葉が戻ってきたら、素晴らしいし、それを聞くために今を頑張っているのかなと思います。年齢に関係なくできることですから、今を熱く生きていきましょう。このような名誉ある賞をいただき、本当にありがとうございました。