キワニスクラブは、奉仕活動を行う民間の団体です。

第23回(平成19年度)青少年教育賞:贈呈式

日 時:2007年6月1日(金)12:00~12:30
会 場:経団連会館9階クリスタル・ルーム
―第23回東京キワニスクラブ青少年教育賞贈呈式―

受賞団体:国分寺子どもクラブ(一橋大学、津田塾大学、東京学芸大学ほか)
代表 鈴木沙也香さん、堀川直子さん、小澤俊裕さん

○小宅青少年教育委員長より選考経過報告

青少年教育委員会の審議の過程で2度にわたって委員有志が国分寺子どもクラブの活動を観察したり、幹部学生と懇談する機会がありました。それらの報告に基づいて委員会で審議の結果、国分寺子どもクラブを表彰することにし、4月の役員会で承認されました。青少年教育委員長を引き受けて2年になります。その間かなり数の学生のボランティア団体を観察したり、フォローする機会がありました。この国分寺子どもクラブは独創性、自立性、永続性の点においてきわめて優れた団体であるという感じを深くしています。これまでキワニスは一つの大学の学内サークルの中から優秀な団体を表彰して来ましたが、この国分寺子どもクラブは一橋大学、津田塾大学、東京学芸大学の3つの大学の学生が中心になり、その他の大学を含む複数の大学の学生で構成されているボランティア団体です。それに加えて、活動の対象を国分寺市に居住する障害を持つ子どもに限定し活動しています。地域密着型サークルというのも新しい点だと思います。

学生ボランティアサークルはある特定の社会福祉施設と連携をとりながら進めるのが一般的ですが、この国分寺子どもクラブの場合は、年間35回くらいの活動をされていますが、メンバー自ら企画して実施しています。原則として一人のメンバーが一人の子どもを担当する等ルールを設け、自主的に、外部の施設とは無関係に行なっています。自主性、独立性がきわめて高いというところに感銘を受けました。15年以上活動が続いていますが、自然と先輩から後輩に受け継がれているようです。活動の永続性という点も感銘を受けました。国分寺市に居住という限られた子どもを対象とした介護事業ではありますが、活動の内容はまさに助けを必要とする他者に対する利他的な奉仕、自己鍛錬というキワニスのモットーに合致する活動だと思います。

○青少年教育賞受賞者

学生代表の鈴木沙也香さんから受賞のことば

本日はこのような素晴らしい賞をいただき、ありがとうございました。私達のサークルは、国分寺在住のハンディキャップを持った子どもたちとその兄弟達と一緒に遊ぶことを主体とした地域に密着した活動をしています。今回このような華々しい賞をいただけるとは思わず、戸惑いを隠せません。

簡単に国分寺子どもクラブの活動について説明させていただきます。国分寺子どもクラブは、ハンディキャップを持った人々への対応が決して手厚かったとは言えない1980年代初頭、ハンディを持った幼稚園児年齢相当の子どもを対象としていた国分寺市の施設「つくしんぼ」の先生がつくった団体であり、当初は専門家とその活動内容に興味を示した大学生によって運営されていました。その後、1990年代以降、活動の担い手は大学生に移り、現在は主に東京学芸大学、津田塾大学、一橋大学、東京経済大学に在籍している学生で構成されている学生サークルとなっています。3月に卒業生を送り出し、4月に新入生を迎え、現在は約70名のスタッフで活動を行っています。

私達のサークルでは、子どもと遊ぶ企画を「例会」と呼び、子どもと遊ぶ大学生を「スタッフ」と呼んでいます。例会では安全確保の点やより濃密な関係を築くために、スタッフと子どもは1対1で遊び、スタッフと子どもの組み合わせは固定しないようにして、交流を広げることに努めています。こういった例会を月2回以上、年間を通じて40回程度の例会を企画、運営しています。

例会では、公園で遊ぶ、料理をする、遊園地へお出かけするといった、ありふれた「日常生活」で、私達が経験してきた遊びを企画しています。また、年に1回、泊りがけで同様に子ども達と遊ぶ、いわゆる「夏合宿」も行なっています。今年は奥多摩に出かける予定で、現在2年生が中心となり準備を進めています。他にも、クリスマス例会や秋の運動会など、季節を取り込んだ企画を行なっています。また、私達スタッフの名前は子ども達にとっては覚えにくいと考え、普段からサークル内でもニックネームで呼び合うようにしています。このニックネームは普段呼ばれているものとは異なり、本人の好きなキーワードを膨らませる連想ゲームからきたもの、出身地に因んだものなど、子ども達から親しみやすい名称を付けています。例えば、本日私とともに授賞式に参加させていただきました堀川さんは、「ユニー」というあだ名を持っています。私は「ジェダイ」です。その他にも、ライム、りんご、こんぴぃといった個性あふれるニックネームをスタッフはそれぞれ持っています。あだ名によって私達は子ども達、保護者の方々、スタッフ同士、より親密なコミュニケーションをとることができます。

私達の普段の活動は、地域に密着した活動です。しかし、ボランティア活動というよりも「子どもと楽しく遊びたい」という純粋な気持ちから活動を続けてきました。恐らく、私達のように子どもと楽しく遊びたいという気持ちを持ち、日々地道な活動をしている団体は数多くあると思います。今回、私達が賞をいただいたことにより、そういった小さな団体に光が当たり、より多くの方々からご理解、ご支援を得られることを強くねがっています。

今回の受賞を一つの通過点ととらえ、今後ともスタッフ一同、子ども達、保護者の方々とともに、活動を続けて行きたいと思います。本日はありがとうございました。

堀川直子さんから受賞のことば

このたびはこのような素晴らしい賞をいただくことが出来、大変光栄に思います。受賞にあたり、私が子どもクラブを通じて体験してきたことを簡単にお話させていただきます。その前に一つお断りをさせていただきます。話の中で度々「障害」ということばを使いますが、これは便宜的なものです。私はむしろこの言葉があまり好きではありませんが、他にうまく表す言葉がないので、使わせていただきます。

まず、私が子どもクラブの活動を通じて得たことで一番大切に思っていることをお話します。私は子どもクラブに入る前、所謂「障害」を持った子どもというのは、「障害」を持っていない人よりも出来ないことが多く、不幸な人生を送っているのではないかと勝手に思い込んでいました。そして、子どもクラブの活動とは、彼らの出来ないことを「やってあげる」「助けてあげる」という、こちらから与えるばかりの奉仕活動なのだと思っていました。

しかし、実際に活動を続けるにつれて、私はその考えは正しくないことに気づきました。確かに、彼らは私達が普段何気なくやっていることが一人ではなかなか出来ませんが、こちらが少し手助けすれば大抵のことは出来ます。また、そのときは出来なくても何回かやって行くうちに、月日が経つうちに、だんだんと出来ることが増えていきます。そして、彼らは決して不幸な人生を送ってなどいませんでした。私達と同じように自分達の好きなことを持っていたり、個性を持っていたり、友達がいたりして、そういう点は私達と何ら変わりなく、彼らは豊かな感情を持ち、一人一人が様々な魅力を持ち、生きていると言うことをこの活動を通して知ることが出来ました。

そして、私が以前持っていた考えは、ある意味では差別的な考えだと言うことにも気づきました。所謂「障害者」を軽蔑したり嫌悪したりすることだけが差別ではなく、「可哀想」と同情することも差別になっていると今では思っています。なぜならば、彼らは自分のことを不幸だとか可哀想だとは、思っていないからです。彼らは彼らなりに人生を歩んでいるのに、こちらが勝手に「障害」があるから「出来ないことがあるから」可哀想だと見なしてしまうのは、彼らを見下してしまっていることになると思います。このような考えが出来るようになったのは、子どもクラブでの活動なしにあり得ませんでした。子どもクラブは「障害を持った子どもを大学生に関わらせる場」であると同時に「大学生を障害を持った子どもに関わらせる場」でもあるのだと思います。子ども達と過ごす時間から、私達も様々なことー例えば、障害児に対する考え方だとか、純粋に楽しいと思う気持ち、そして彼らの成長を喜ぶ気持ちなど多くのことをもらっています。「大学生を障害を持った子どもに関わらせる場」として、これからも継続して活動を行い、彼らに対し差別的な考えを持つ人が少しでも減っていくことを目指して行きたいと思います。

次に、子どもとの関わりではなく、学生同士の関わりから私が得たことをお話したいと思います。先ほど、鈴木さんが述べた通り、子どもクラブは東京学芸大学、津田塾大学、一橋大学などの学生が集まって活動しています。そして、私達は子どもと何処で何をして活動するかを自分達で一から企画しています。活動の企画をし、準備をし、実際に行なうことはかなりやりがいがありますが、それなりに負担がかかり大変でもあります。その中で私が一番大事だと感じたことは、夏合宿を企画したときでした。子どもクラブでは毎年、夏休みに1泊2日で合宿を行なっています。昨年の夏合宿を企画しましたが、丸一日子どもを預かることの責任の重大さ、企画の大きさにとてもプレッシャーを感じ、また事前の準備の多さに挫けてしまいそうになりました。しかし、私が投げ出してしまいたくなったとき、一緒に企画し準備を進める仲間の姿を見て、仲間からの励ましを受けて、頑張ろうと思えました。私が夏合宿という大きな企画を成し遂げることが出来たのは、仲間の存在があったからです。私は人に頼るのは好きではなく、一人で生きているような顔をしていたときがあります。しかし、人と協力して行くことの大切さをこのとき感じることが出来ました。

このように、人と協力して一つのものを成し遂げるという経験はなかなか出来るものではありません。この団体に入らずに普通の大学生活を過ごしていたら経験しなかったであろうことを、この国分寺子どもクラブという団体を通じ、たくさん経験させてもらいました。

今回はこのような賞をいただくことが出来、大変嬉しく思っています。これからもこの受賞を糧に活動を続けて行きたいと思います。本日はありがとうございました。